気仙沼訪問【後半】「想定外」を「想定内」に変えていく!
2日目は一般社団法人ボランティアステーションin気仙沼、
代表理事の菊田忠衞さんに気仙沼を案内してもらいました。
「この赤い印まで津波が来ました」
すぐ下の海沿いをJR気仙沼線が走っていましたが、
線路の復旧は叶わず、今はBRT(バス・ラピッド・トランジット)が代替で走っています。
海沿いにかつての線路がありました。
地図で見ると線路が途切れているのがわかります。
続いて杉の下地区に連れて行ってもらいました。
続いて杉の下地区に連れて行ってもらいました。
ここは当時ハザードマップにより【海抜12m 一時避難場所】と指定されていたので、
地震が起きた時、この高台に約60名が避難していました。
しかし、実際の津波の高さは18m。
杉の下地区全体で93名の方が亡くなられました。
今は開けた場所ですが、かつては民家や民宿、旅館が並んでいたそうです。
一方で、視界の先に見える向洋高校。
こちらの学校は杉の下地区よりも低い場所にあるにも関わらず、
生徒約170名、教職員約20名、全員の命が助かっています。
のちに、向洋高校の小野寺文男教諭が、
生死の分かれ目をこう分析されています。
当日校内に残っていた生徒,教職員は全員難を逃れることができたが,
当時は必死で考えもしなかったが,
後になって冷静に考えてみると様々な要因が生死を分けていたと考えられる。
その中でも特に生死を分けたと考えられるのは,
津波に対しての「危機意識の高さ」ではないだろうか。
長文になりますが、ぜひこちらのレポートをご一読ください。
「その時,現場はどう動いたか」3.11の震災直後の動向
宮城県気仙沼向洋高等学校
向洋高校は震災遺構として保存が決定しています。
実は気仙沼訪問の前後に、南三陸町と石巻市も訪問させていただいたのですが、
「生死の分かれ目」は至るところで見受けられました。
職員43名が犠牲となった南三陸町防災対策庁舎
すぐそばには約330名の命を救った高野会館(写真左の白い建物)
何が生死を分けたのか?
社会福祉協議会の佐々木真さんのインタビューが参考になります。
330人を救った高野会館 南三陸町・佐々木真さんが見た「あの日」
産経フォト 2016.3.11
そして、石巻市立大川小学校
児童74名が犠牲になりました。
こちらの学校もハザードマップでは【予想浸水域外】でした。
これらの事例からも「想定内」では命を守れないことがはっきりとわかっています。
そのため、大川小学校の裁判の判決では、
学校側に津波予想浸水域の信頼性の独自検討を求めました。
しかし現時点で、県沿岸12市町村の小中学校のうち、
独自検討しているとの回答は2割以下だそうです。
大川小の訴訟判決、現場に波紋
読売新聞 2018年09月01日
向洋高校のように、想定外の出来事を想定内に変えていく防災意識を一人ひとりが持ち、
命を守るために先入観や偏見、思いこみを捨てる「ハザードスイッチ」を、
一人ひとりの中につくっていく事が大切なのではないでしょうか。
菊田さんからのメッセージ
気仙沼では岩井崎園地も案内してもらいました。
津波の被害でまるで龍のような姿になった「龍の松」(保存加工されています)
気仙沼はどこを案内してもらっても、津波・火災被害の壮絶さを感じると同時に、
復興の息吹を感じとることが出来ます。
水産加工場
気仙沼合同庁舎
魚市場(建物2階部分に津波が到達したことを表示する看板が)
新たに建設中の魚市場
完成イメージ(気仙沼市HPより引用)
『鮮度面でも衛生面でも日本トップの魚市場を造ることになる』菅原市長
途中でボランティアステーションの畠山輔さんも合流してくださり、
気仙沼の美味しいお魚をいただきました。
沢山のお話を聞かせていただきましたが、
実際には資料や映像も使いながら、
ここに書いた何十倍ものお話を伝えてくださいました。
想像を絶する、魂がつぶれるようなつらい経験。
よほどの気持ちの強さと覚悟、そして優しさがないと人に話すことは出来ないと思います。
笑顔で私たちを迎えてくださり、
大切な事を沢山教えてくださりありがとうございました。
菊田さんの言葉はどれも深く、胸に突き刺さりました。
『私は奇跡的に生き延びることができました。
震災の教訓を後世につたえることが生かされた者の務めであり、
できる限りを尽くす事で供養になればと考えます』
『相見互い(あいみたがい・同じ境遇にある者同士が助け合うこと)の気持ちが協和を築く。
自分が一番不幸と思ってはならない、暗澹とした思いを払拭しなければ前に進むことはできない。
東日本大震災は、不条理な出来事であった。
震災から身を守るためのいちばんの障害は、人々の忘却かもしれない』
教えていただいたことをしっかりと胸に刻んで…
あの日、生きたかったのに生きることが出来なかった命に失礼のないように、
生きている私たちが知恵を出し合い、協力し合い、
安心であたたかな社会を実現できるように、しっかりと行動していきます!